不妊治療について
「不妊症」とは、何らかの治療をしないと、それ以降、自然妊娠する可能性がほとんど無い状態を言います。世界保健機関(WHO)では、不妊症を「1年間の不妊期間を持つ状態」と定義しています。
不妊の治療法はいくつもあり、不妊の原因によって、その内容も変わってきます。
当クリニックでは不妊症の治療として、タイミング法、および排卵誘発剤(内服薬)を用いたタイミング法を行っております。
*人工授精や体外受精などをご希望の方には、他の専門医療機関をご紹介いたします。
タイミング法
基礎体温表や超音波検査で排卵日を予測して、排卵日前後に夫婦生活を持つことによって妊娠を目指す治療法です。不妊治療と言うと、人工授精や体外受精などの高度な方法を思い浮かべがちですが、実はタイミング法こそが最も多く行われているのです。
タイミング法は、不妊検査で目立った原因が無い場合に行われます。
タイミング法の基本的な流れ
- STEP1
- 超音波検査(エコー)で、卵胞の大きさを計測し、排卵日を予測します。排卵予測日の2~3日前にご来院ください。
目安としては、月経が28~30日周期の場合、月経開始後12~14日頃になります。排卵予測日は、一番大きな卵胞(主席卵胞)が20mmを超えると思われる日になります。 - STEP2
- 排卵予測日に性交をします。
- STEP3
- 予定月経日になっても月経が訪れず、さらに7~10日過ぎるようであれば、妊娠反応が無いかどうかを確認します。惜しくも月経が来てしまった場合は、再度タイミングを試みていくことになります。
※排卵障害のある方や、上記の自然周期によるタイミング法を数ヶ月ほど続けても妊娠の兆候が見られない場合は、排卵誘発剤(内服薬)を用いたタイミング法を行い、自然妊娠を目指します。
不育症
妊娠はするけれども、流産、死産や新生児死亡などを繰り返し、結果的に元気な赤ちゃんを得ることができないケースを不育症と呼びます。
一般的には2回連続した流産・死産があれば不育症と診断され、原因を探します。
また、1人目が無事に生まれても、2人目、そして3人目が続けて流産や死産になったような場合は、「続発性不育症」として検査・治療を行う場合があります。
不育症と不妊症は違う
不育症の場合は、たとえ妊娠したにしても、流産や死産を繰り返してしまいます。ただし、不育症と診断されたとしても、そのうちの約8割の方はその後、出産ができています。流産や死産を繰り返すのは言わば偶然的なものであり、妊娠できている限りは出産できる可能性のほうが高いのです。そのため不育症は、妊娠を望んでいるのにそれが叶わない「不妊症」とは明らかに異なります。したがって、不育症になったら妊娠・出産ができないということには決してなりません。
不育症の原因
妊娠初期に流産する原因の多くは赤ちゃん側、つまり受精卵の偶発的な染色体異常で、妊娠のたびに偶然が重なり、2回以上流産すると考えられます。このタイプの流産を治療したり予防したりするのは、難しいところです。しかし、なかには流産を繰り返すリスク因子を持っている可能性があり、きちんと検査をしておく必要があります。リスク因子としては、内分泌代謝異常、子宮形態異常、血液凝固異常などが知られています。ただ、リスク因子があるからといって100%流産や死産に至るわけではありません。
また、詳細な検査をしても原因が特定できないケースも少なくありません。原因がわからなくても次の妊娠で出産することはよくありますので、くよくよせずに適切な治療を受けましょう。
不育症の治療法
大きく分けて3通りの治療法があり、個々の異常に応じた治療法を選択します。
なお、流産や死産の原因が、染色体異常による偶発的な場合や、明確に特定できない場合には、特別な治療はせずに、カウンセリングのみが行われます。
内分泌代謝異常の治療
原因疾患に合わせて生活改善や食事療法、また薬物療法などが行われます。原因が下垂体腫瘍にある場合は、手術の適応になることがあります。
子宮形態異常の治療
先天的な子宮奇形や、子宮内腔に変形をもたらす子宮筋腫などがある場合には、手術を行うことがあります。手術が必要かどうかについては、医師とよく話し合うことが大切です。
血液凝固異常
血液が固まってできる血栓を治療するために、アスピリン(飲み薬)やヘパリン(注射)などの薬物療法を行います(抗凝固療法)。